お知らせ

「国民皆歯科健診(こくみんかいしかけんしん)」という言葉を耳にしたことはありますか?これは全年代を対象に、定期的な歯科健診の受診を推進しようという国の新しい取り組みです。
子どもの頃は学校で毎年歯科健診を受けていたのに、大人になると「気付けば何年も歯医者に行っていない」という人は少なくありません。
しかし実際には、歯と口の健康は全身の健康や認知症リスクとも深く関わっていることが分かっています。
だからこそ、定期的に歯科健診を受け、日々の生活の中で大切にしていく必要があるのです。こうした背景を踏まえ、国が掲げているのが「国民皆歯科健診」。本記事では、その内容や狙い、モデル事業の成果をわかりやすくご紹介していきます。
最後には毎日のセルフケアに役立つアイテムも紹介していますので、ぜひ参考にしてください。
国民皆歯科健診とは?

子どもの頃は歯科健診が義務付けられていますが、大人になると受診は自己判断に任されます。その課題を解決するために進められているのが、国民皆歯科健診です。
子どもの歯科健診は義務化されている
日本では、1歳半と3歳の乳幼児健診で歯科健診が義務付けられているほか、小学校から高校までは毎年学校歯科健診が実施されます。この仕組みにより、子どものむし歯は早期に発見・治療が可能となり、着実に改善が見られています。
数値で見ても、3歳児の一人平均むし歯数は平成6年の2.36本から令和元年には0.39本まで減少しました。
こうした成果は、乳幼児期からの健診体制が整備・普及してきたことの効果を示しています。
大人になると自己判断に任される現状
大学生以降は、歯科健診を受けるかどうかが完全に自己判断に委ねられます。義務的に受診する仕組みがなくなることで、自然と健診から足が遠のき、受診率は大幅に低下しています。
その結果、むし歯や歯周病を放置して悪化させてしまうケースが増加し、特に就労世代では「時間がない」「必要性を感じない」といった理由から受診を後回しにする人が多く、予防意識が十分に浸透していません。
実際のデータでもその傾向は表れており、20代の6割以上が定期チェックや歯科健診を受けておらず、かかりつけ歯科医がいない人も3人に1人にのぼります。
多くの人が予防の重要性を「年齢を重ねてから」実感するのが現状です。
国民皆歯科健診の狙い
国が推進する国民皆歯科健診の目的は、歯科健診の義務化が終わった後の成人に対し、生涯を通じて定期的に歯科健診を受けられる制度を整えることです。
国民皆歯科健診を通じて歯や口内の健康を守ることで、医療費の増大を抑制する効果も期待されています。これは、国全体の持続可能な社会保障制度を支えるうえでも重要な取り組みです。
なぜ定期的な歯科健診が推進されているのか?

国民皆歯科健診の推進には、単なるむし歯予防を超えた理由があります。近年の研究で、歯の本数や歯周病の有無が健康寿命や認知症リスクに直結することが分かってきたのです。
歯の本数と健康寿命の関係
高齢になってから歯がどれだけ残っているかは、健康寿命に大きな影響を与えることが分かっています。
調査によると、歯が20本以上ある人は健康寿命が長く、要介護で過ごす期間が短い傾向にあります。例えば、歯が0本の人の健康寿命は平均1,260日ほどであるのに対し、20本以上ある人は1,305日と長く、約1年半もの差が生じています。
歯を守ることは快適に食事をする楽しみを維持するだけでなく、生活の質を保ち、介護を必要としない時間を延ばす事に繋がるのです。
歯の喪失と認知症リスクの関わり
歯を失うことは、見た目や食事のしづらさだけでなく、認知症リスクにも直結します。
65歳以上の健常者を対象に行われた調査では、歯をほとんど失い、義歯を使用していない人は、20本以上の歯がある人に比べて認知症の発症リスクが最大1.9倍に高まることが示されました。
この結果は、年齢や生活習慣、治療中の疾患などの条件を調整した上でも確認されています。つまり「歯を守る」あるいは「失った場合でも義歯で補う」ことが、認知症予防に大きな意味を持つのです。
若年層(20~30代)の歯周病罹患率が増加傾向
前述した通り、子どものむし歯率は大きく改善していますが、大人の歯周病は改善していません。
調査では、大人の2人に1人が中等度以上の歯周病(歯周ポケット4mm以上)に罹患していることが明らかになっています。特に20~30代においては、平成17年・23年と比較して、平成28年・令和4年の方が罹患率が高いという結果が出ています。
働き盛りの世代はなかなか歯医者に行く時間が取れず、定期チェックや歯科健診を後回しにしがちですが、気付かないうちに歯周病が進行しているケースが多いため、この年代での健診が非常に重要であることが分かります。
こうした状況を改善するため、令和6年度からは20歳・30歳も歯周疾患検診の対象に追加され、20歳から70歳まで10年ごとに必ず検診を受けられる仕組みとなりました。
国民の声から見る歯科健診の必要性

歯や口の健康について考えているのは国だけではありません。日本歯科医師会が2022年に実施した全国調査(15~79歳男女1万人対象)からは、歯科健診に対する生活者の意識や行動が詳しく分かっています。
歯や口の健康意識が高まっている
全国調査によると、多くの人が歯の大切さを強く意識していることがわかりました。
「できるだけ自分の歯を残したい」と答えた人は92%、「健康維持には歯や口の健康が欠かせない」と考える人は91%にのぼります。
また「歯や口の健康を大切にしている」と答えた人も79%に達しました。
年齢が高いほど意識は強い傾向にありますが、20代など若い世代でも歯や口の健康に気を遣う人が少なくないことが示されています。
歯科健診に行かなかった事を後悔する人は8割以上
直近1年で歯や口の問題により日常生活に支障を来した人は約5人に1人(17.5%)。そのうちの83.2%が「もっと早く歯科健診や治療を受けておけばよかった」と後悔しているとの結果も出ました。
また、歯科健診や定期チェックを受けている人は、以下のように口腔の健康だけでなく生活全体の質(QOL)も高いことが明らかになっています。
- ・硬い物を問題なく食べられる
・左右バランスよく噛める
・口臭を気にする人が少ない
・健康状態や睡眠の質に満足している
・毎日の生活が充実している
一方で、令和4年の調査では、過去1年間に歯科健診を受診した人は58.0%、市町村が実施する歯周疾患検診の受診率は推定わずか5.0%にとどまっています。
さらに性・年齢階級別にみると、男性では30歳から50歳未満の層で特に受診率が低く、30%台程度しか受けていません。
性別による差も明らかになっており、女性は男性より受診率が高くなっています。意識は高まっているのに、行動にはまだ結びついていないというのが現状です。
実施されている国民皆歯科健診のモデル事業

国民皆歯科健診の本格導入に向けて、自治体や職場などで実証的な取り組みが進められています。ここでは、モデル事業の実施内容や得られた成果・課題、さらに生活の場へと広がる新しい取り組みを紹介します。
モデル事業の実施内容
国や自治体は、歯科健診をまだ実施していない地域や職場に対して支援を行い、対象拡大や受診率向上に向けた実証を進めています。効果やコスト、実施体制を検証するために、以下のような取り組みが行われました。
- 自治体での実証:31自治体が協力し、標準的な歯科健康診査票を用いた健診や健診後の保健指導を実施。一般健診と合わせて簡易検査を取り入れ、手順や課題を整理。
- 職域での実証:110事業所が協力し、職場健診と同時に歯科健診を実施。効率的・効果的な方法や課題を検証。
- 受診勧奨の実証:25自治体・11事業所がデータベースを活用して対象者を選定し、受診勧奨を実施。効果的な方法を検討。
モデル事業から分かった成果と課題
モデル事業では、いくつかの成果が確認されました。まず、一般健診と同時に実施することで高い参加率が得られ、これまで無関心だった層や若年層にもアプローチできました。
さらに、簡易検査であってもセルフケア意識や受診意欲の向上につながり、公平に健診の機会を提供できた点も評価されています。
一方で「受診するつもり」で終わってしまい、実際に歯科健診に足を運ぶ人が少ないことが課題として浮き彫りになりました。
意欲を行動につなげる仕組みをどう整えていくかが、今後の大きなテーマとなっています。
生活の場で健診を広げる取り組み
歯科健診の場をもっと身近にするため、調剤薬局や商業施設での口腔チェックが試行されています。
さらに、簡易検査キットやAIを活用した診断アプリの開発も進んでおり、生活の中で手軽に口腔の健康状態を確認できる仕組みが整いつつあります。
今日から始めるセルフケア
毎日の歯みがき
むし歯や歯周病を防ぐ上で、まず大切なのは日々の丁寧な歯みがきです。定期的な歯科健診と組み合わせることで、健康な口腔環境を維持し、健康に過ごしましょう。
毎日の口腔ケアにおすすめの商品をご紹介しますのでぜひチェックしてみてください。
持ちやすくしっかり汚れを落とす富士山歯ブラシ
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口腔機能を鍛えるトレーニング
日本歯科医師会の調査では、10代の48.3%、20代の40.6%が「滑舌の悪さ」「食べこぼし」など口腔機能の不調を経験している事が明らかになりました。
口腔機能の未発達や低下はシニアだけの問題ではなく、若い世代にも広がっているのです。
歯科医師会は「30回噛む習慣」や「あいうべ体操」など、口周りの筋肉を鍛える簡単なトレーニングを推奨していますので、ぜひ皆さんも1日1回気が付いた時に取り入れるようにしてみてください。
まずは自分で歯科健診を受けにいこう
国民皆歯科健診は国の方針として検討・推進が進められていますが、現状ではまだ制度として完全に義務化されているわけではありません。
ただご紹介した通り、モデル事業が実施されていたり、20歳30歳でも歯周疾患検診が受けられるようになったりと、徐々に取り組みが広がりつつあります。
ぜひこの機会に、国の制度を待つのではなく、自分や家族の健康を守るために歯科健診に行ってみませんか?
歯科健診を定期的に受けることは、全身の健康を守ることや、QOLの向上、突然の歯痛やトラブルを未然に防ぐことにも繋がるなど、沢山のメリットがありますよ。




